MDA論文が出ました

多次元分析(MDA)を用いて学際的研究論文のディスコースを分析した下記の共著論文がInternational Journal of Corpus Linguistics誌に掲載されました。

Thompson, P., Hunston, S., Murakami, A., & Vajn, D. (2017). Multi-Dimensional Analysis, text constellations, and interdisciplinary discourse. International Journal of Corpus Linguistics, 22(2), 153–186. doi: 10.1075/ijcl.22.2.01tho [リンク]

本論文は2013年8月から2015年10月まで勤務していたバーミンガム大学でのIDRDプロジェクトの成果の一部です。まずは11の研究分野のジャーナルを対象に、学際的な研究分野のジャーナルと非学際的な研究分野のジャーナルはどのように異なるのかをMDAの各次元に基いて見ています。その後に、Global Environmental Change(GEC)というジャーナルに焦点を当て、そこに出版された論文をMDAの次元得点に基いてクラスタリングを行い、ボトムアップ式にGEC論文のパターン(論文ではconstellationと呼んでいます)を見いだしています。また副次的にランダムフォレストを用いて、個々の論文が次元得点を基にどの程度それが出版されたジャーナルに正しく分類できるかを見ています。MDA→クラスタリングの流れ自体はBiberが既に1980年代に行っていますが、それをより狭い対象(クラスタリングに関しては一つのジャーナル)で行い、それでも意味のあるパターンが見いだせたというのが新しい点です。
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チュービンゲン大学の博士研究員になります

4月中旬に任期満了によりケンブリッジ大学を退職した後、5月下旬に日本に帰国して江ノ島近郊に滞在していましたが、10月1日より半年間、ドイツはチュービンゲン(独:Tübingen; 英:Tuebingen)大学で博士研究員(postdoctoral researcher)として勤務することになりました。私の博士論文の外部審査員であったDetmar Meurers氏や言語統計で著名なHarald Baayen氏がいらっしゃるところです。私自身はLEAD Graduate School and Research Networkという学際的な教育研究を行うセクションの所属となります。統計関係の授業を一コマ担当する以外は研究に注力できるはずです。ドイツで研究できる機会は今後もそうないでしょうし、色々と学びたいです。

渡独するに当たり、主にビザ申請と住居探しという2点が労力を必要としました。まず研究滞在ビザに必要な書類はここに書かれているのですが、諸々の確認のためにドイツ大使館に問い合わせを行ったところ、上記ページの書類に加え、学部から博士まで全ての大学の学位証明書と滞在期間全てをカバーする保険 1の証明書も提出するように言われました。またその際に、私の滞在が研究滞在ビザの対象となるかどうかを領事官に確認してもらえました。ビザ自体は保険がカバーしている期間に合わせて出るようです。ビザは予約を取ってドイツ大使館で申請するのですが、8月12日の時点で最短でも9月18日まで待たねばならず、ビザ申請が許可されビザを入手するまでに更に一週間ほどかかったためビザの入手はギリギリ(渡航日の前日!)となってしまいました。ビザ申請予約は大阪にある総領事館ではもう少し空きがあるようでしたが、住んでいる場所により申請場所が決まるのでどうしようもありません。

住居探しに関しては更に大変でした。チュービンゲンは大学街なのですが、大学規模が拡大し続けているにもかかわらず街の住居数はそれほど増えていないため、部屋探しは常に大変なようです。年度初めの10月は特に酷く、大学のジムで寝泊まりする学生もいるとのこと。ケンブリッジも大学街でやはり大学規模の拡大に住居数が追いついていない街でしたが、チュービンゲンほど酷くはありませんでした。チュービンゲンでは私が問い合わせた中でも、一件の空きアパートに対して24時間で150件の問い合わせがあったケースもあり、競争率だけだと就職活動よりも厳しいかもしれません。チュービンゲン大学にはWelcome Centerという我々のような国外から来る研究者の面倒を見てくれるところがあるのですが、そこも住居に関してはほとんどお手上げのようで、数件(こちらの条件を満たさずあまり魅力的ではない)物件を紹介してくれたほかは、物件紹介のウェブサイトを教えてくれたのみでした。

私は結局、ここここここここのウェブサイトで物件を探していました。とりわけここが役に立ちました 2。ウェブサイト上でおそらく数十件の物件に関して家主や現借主にメッセージを送りましたが、その過半数はレスポンスがなく、あった場合も他の人に貸すことが既に決まっている(あるいはそう決めた)という連絡や、主に賃貸期間に関する条件が合わない(もっと長期に亘り貸与したい大家が多い)ため貸せないというものでした。8月中旬から部屋探しを始め、9月中旬になっても何も決まっていなかったため気を揉みましたが、幸いにして渡航一週間前くらいに幾つか良いレスポンスがありました。結果的に最初の2週間強はある物件に滞在し、その後は数日間のホテル暮らしを経て、10月中旬から私がドイツを去る4月初旬まで別の物件に滞在する予定です。しかしそのためには当初予定していた家賃の上限を上げざるを得ず、半年間なので収支が多少マイナスでも何とかなるものの、これが年単位だと借りれないだろうというような物件になりました。折角なので、私の収入ではなかなか住めないようなアパートでの生活を半年間楽しみます。

Notes:

  1. 私はCare Concept社のものに加入しました
  2. サイトによらず、詐欺が横行しているようです。私も詐欺だと思われるメッセージを数件受信しました。私の場合は「自分は国外にいるから直接会うことができない。Airbnbを通じて家賃を支払ってくれ」というメッセージと共に、Airbnbに似せた他サイトに導かれる、という手口です。
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